ティムが馬から降りて近づくと、うつ伏せで倒れていたのは小さな少年だった。ティムは少年を抱き上げ、声をかける。
「大丈夫? しっかり!」
しかし、少年の意識は朦朧としている。そこへアレンとクレイグが駆け寄ってくる。
「アレン診てあげて」
ティムが言い、アレンが少年の様子を見る。
「体に傷もないし、脱水じゃないかな」
アレンは少年を抱えて馬に乗り、少年を木陰まで運ぶ。アレンが濡らしたタオルで少年の体を冷やし、ティムは少しずつ水を飲ませる。クレイグはそばで見守っている。しばらくして少年が意識を取り戻す。アレンが少年に声をかける。
「大丈夫?」
アレンが少年の顔の前で手を振ると、少年が小さく頷いてつぶやく。
「お兄さんたち……誰?」
「おまえ何であんなとこに転がってたんだ?」
クレイグが聞くと、少年はクレイグをじっと見つめた後、突然声を上げて泣き出してしまう。
「大丈夫? どこか痛いの?」
アレンが心配そうに尋ねる。それを見たティムがクレイグを見て言う。
「クレイグのせいだよ」
「なんでだよ。なんもしてねえだろ」
「きっと顔が怖かったんだよ」
「このイケメンのどこが怖いんだよ」
アレンが少年の涙を拭いてなだめると、少年は落ち着いて話し始める。
「父さんが……父さんが、死んじゃった」
そう言うと少年はまた泣き出してしまい、アレンが背中をさすりながらなだめる。
「大丈夫、大丈夫。怖いことがあったんだね。もう大丈夫だからね」
少年はアレンにしがみついて泣きじゃくる。ティムとクレイグも心配そうに少年を見つめ、クレイグが少年の頭を優しく撫でて言う。
「おまえ、どこから来たんだ? 家まで送ってやるからそんなに泣くな」
少年は顔を上げて涙を拭い、指をさして言う。
「あっち」
3人は指のさす方を見て、クレイグが言う。
「待て待て。あっちじゃわかんねえよ」
少年は潤んだ瞳でクレイグを見つめる。
「や、やめろ、泣くなよ。わかったから。ちょっと待ってろ」
クレイグはそう言って、ティムを連れて少し離れたところへ行く。
「どうすんだよ。厄介なもん見つけやがって」
クレイグが小声で言う。
「ひどっ。見つけずに野垂れ死にすればよかったってこと?」
「そうじゃねえけど、自分の家もわかんねえ奴どうすんだよ」
「そんなの僕だってわかんないよ」
「くそっ。こっちは今日寝るとこもねえってのに……」
「土地勘もないのにあの子の家までたどり着けるかな」
「4人で行き倒れはごめんだぜ」
ひそひそと話す二人にアレンが声をかける。
「二人とも何してるの! とりあえずあっちの方行ってみようよ」
そう言って手招きしている。クレイグはアレンの腕を引いて少年から少し離す。
「何?」
アレンが不思議そうに聞く。
「おまえバカか。あんなガキの言うこと信じて行く気か?」
「だってそれしかないし。あの子の家はあの子しか知らないんだから」
「それがバカだって言ってんだよ! 方位磁石も持ってねえガキがこの広い砂漠で何で自分の家があっちってわかんだよ」
ティムも話に入る。
「それにあっちって言っても、あっちにどれくらい行けば着くのかもわかんないよ?」
アレンが少し考えてから話し出す。
「たしかにわかんないけど、このままってわけにもいかないでしょ。だったら行ってみるしかないよ」
クレイグがため息をついて言う。
「能天気だな。花探さなきゃいけねえんだぞ。永遠の迷子の相手してる場合かよ」
「少し逸れるけど、ちゃんと間に合うようにするって」
「どうやってだよ。家わかんねえんだぞ」
「夜までに目的地に行けるところまでしか行かない。もっと遠かったらそのとき考えるよ」
アレンの言葉を聞き、二人は渋々同意する。そして少年の言葉だけを頼りに3人は少年の家を目指すのだった。
その頃、メグレスの街に残ったブラッドとケイは、見舞客が来ることもなくなり静かな時を過ごしていた。ブラッドの暴言が街の女たちの中で広まったのだ。ブラッドはベッドに座り窓の外を静かに眺めている。そこへケイがやってきて声をかける。
「ちょっと買い物に出るけどいるものある?」
「いや」
ブラッドは窓の外を見たまま答える。
「そっか。じゃあ行ってくる」
ケイは部屋を出て行く。ブラッドは自分の手を見つめて、握ったり開いたりと痛みをこらえながら確かめるように動かすのだった。
市場に来たケイは、露店を見回り、酒とサイダーを買う。
「ありがとう」
ケイは店主に礼を言って紙袋を受け取る。そこへ慌てて走ってきた女がぶつかってくる。ケイは持っていた紙袋を落としてしまい、瓶が割れて中身がこぼれ出す。ケイは割れた瓶を見て、女に文句を言おうとするが女は振り向きもせず走り去ってしまう。
「ちょっと! あんた――」
そのとき、どこからか銃声がし、ガラスの割れる音が聞こえた。ケイは先ほどぶつかってきた女が走ってきた方に目を向ける。すると数人の人々が慌てて逃げるように走ってくるのが見えた。ケイは思い立ったように急いで駆け出した。
「大丈夫? しっかり!」
しかし、少年の意識は朦朧としている。そこへアレンとクレイグが駆け寄ってくる。
「アレン診てあげて」
ティムが言い、アレンが少年の様子を見る。
「体に傷もないし、脱水じゃないかな」
アレンは少年を抱えて馬に乗り、少年を木陰まで運ぶ。アレンが濡らしたタオルで少年の体を冷やし、ティムは少しずつ水を飲ませる。クレイグはそばで見守っている。しばらくして少年が意識を取り戻す。アレンが少年に声をかける。
「大丈夫?」
アレンが少年の顔の前で手を振ると、少年が小さく頷いてつぶやく。
「お兄さんたち……誰?」
「おまえ何であんなとこに転がってたんだ?」
クレイグが聞くと、少年はクレイグをじっと見つめた後、突然声を上げて泣き出してしまう。
「大丈夫? どこか痛いの?」
アレンが心配そうに尋ねる。それを見たティムがクレイグを見て言う。
「クレイグのせいだよ」
「なんでだよ。なんもしてねえだろ」
「きっと顔が怖かったんだよ」
「このイケメンのどこが怖いんだよ」
アレンが少年の涙を拭いてなだめると、少年は落ち着いて話し始める。
「父さんが……父さんが、死んじゃった」
そう言うと少年はまた泣き出してしまい、アレンが背中をさすりながらなだめる。
「大丈夫、大丈夫。怖いことがあったんだね。もう大丈夫だからね」
少年はアレンにしがみついて泣きじゃくる。ティムとクレイグも心配そうに少年を見つめ、クレイグが少年の頭を優しく撫でて言う。
「おまえ、どこから来たんだ? 家まで送ってやるからそんなに泣くな」
少年は顔を上げて涙を拭い、指をさして言う。
「あっち」
3人は指のさす方を見て、クレイグが言う。
「待て待て。あっちじゃわかんねえよ」
少年は潤んだ瞳でクレイグを見つめる。
「や、やめろ、泣くなよ。わかったから。ちょっと待ってろ」
クレイグはそう言って、ティムを連れて少し離れたところへ行く。
「どうすんだよ。厄介なもん見つけやがって」
クレイグが小声で言う。
「ひどっ。見つけずに野垂れ死にすればよかったってこと?」
「そうじゃねえけど、自分の家もわかんねえ奴どうすんだよ」
「そんなの僕だってわかんないよ」
「くそっ。こっちは今日寝るとこもねえってのに……」
「土地勘もないのにあの子の家までたどり着けるかな」
「4人で行き倒れはごめんだぜ」
ひそひそと話す二人にアレンが声をかける。
「二人とも何してるの! とりあえずあっちの方行ってみようよ」
そう言って手招きしている。クレイグはアレンの腕を引いて少年から少し離す。
「何?」
アレンが不思議そうに聞く。
「おまえバカか。あんなガキの言うこと信じて行く気か?」
「だってそれしかないし。あの子の家はあの子しか知らないんだから」
「それがバカだって言ってんだよ! 方位磁石も持ってねえガキがこの広い砂漠で何で自分の家があっちってわかんだよ」
ティムも話に入る。
「それにあっちって言っても、あっちにどれくらい行けば着くのかもわかんないよ?」
アレンが少し考えてから話し出す。
「たしかにわかんないけど、このままってわけにもいかないでしょ。だったら行ってみるしかないよ」
クレイグがため息をついて言う。
「能天気だな。花探さなきゃいけねえんだぞ。永遠の迷子の相手してる場合かよ」
「少し逸れるけど、ちゃんと間に合うようにするって」
「どうやってだよ。家わかんねえんだぞ」
「夜までに目的地に行けるところまでしか行かない。もっと遠かったらそのとき考えるよ」
アレンの言葉を聞き、二人は渋々同意する。そして少年の言葉だけを頼りに3人は少年の家を目指すのだった。
その頃、メグレスの街に残ったブラッドとケイは、見舞客が来ることもなくなり静かな時を過ごしていた。ブラッドの暴言が街の女たちの中で広まったのだ。ブラッドはベッドに座り窓の外を静かに眺めている。そこへケイがやってきて声をかける。
「ちょっと買い物に出るけどいるものある?」
「いや」
ブラッドは窓の外を見たまま答える。
「そっか。じゃあ行ってくる」
ケイは部屋を出て行く。ブラッドは自分の手を見つめて、握ったり開いたりと痛みをこらえながら確かめるように動かすのだった。
市場に来たケイは、露店を見回り、酒とサイダーを買う。
「ありがとう」
ケイは店主に礼を言って紙袋を受け取る。そこへ慌てて走ってきた女がぶつかってくる。ケイは持っていた紙袋を落としてしまい、瓶が割れて中身がこぼれ出す。ケイは割れた瓶を見て、女に文句を言おうとするが女は振り向きもせず走り去ってしまう。
「ちょっと! あんた――」
そのとき、どこからか銃声がし、ガラスの割れる音が聞こえた。ケイは先ほどぶつかってきた女が走ってきた方に目を向ける。すると数人の人々が慌てて逃げるように走ってくるのが見えた。ケイは思い立ったように急いで駆け出した。
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